1.資料の収集・整理に関しては、昨年度に引き続き、沖縄側の資料として、沖縄県公文書館所蔵琉球政府文書の占領初期の政治組織に関する基礎資料、琉球大学付属図書館所蔵の戦後初期の新聞・雑誌コレクションについて、また、米国側の沖縄統治に関する基礎資料として、米国国立公文書館所蔵琉球米国民政府文書およびマッカーサー記念館アーカイヴ所蔵米陸軍琉球軍関係文書を中心に収集・整理をおこなった。 2.今年度は、第二次世界大戦終結から対日講和条約発効の時期の沖縄における政治組織の形成に関して、特に沖縄人民党に注目して集中的な考察をおこなった。沖縄側と米国側の資料を往復しつつ、米軍支配下の沖縄社会で醸成された重層的な権力関係と政治的空間、そして政治意識の覚醒の場を実証的に把握することを基礎作業とした。その際、とくに冷戦体制による同時代的あるいは構造的制約条件の影響、また、そうした条件の下での人びとの自覚を主眼点として問題を整理した。第二次世界大戦後の沖縄に生じた政治組織は、沖縄人民党に限らず、総じてイデオロギー的な理由からというよりは、地域の自立の課題に起因する自生的な性格を持つものであり、社会経済的危機に直面し、「自治」や「民主主義」をめぐって米軍占領の矛盾に対して反発を強める住民の政治意識の覚醒と結合を促した。一方、米軍政府は、1949年ごろからの東アジアにおける冷戦体制の深化のなかで、これら沖縄の土着的な変革運動の切り崩しをはかろうとした。
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