本年度初めに提出した研究実施計画に基づき、国内外での聴き取り、文献史料調査に重点をおいた。 国外ではハワイ大学ハミルトン図書館で南洋庁関係史料を調査し、本研究遂行に重要な史料を発見できた。しかしながら、史料複写の手続きに予想外の時間がかかったため、経費が明らかになるまで研究費用の執行を控えざるをえず、また、補助金使用予定内訳を変更して複写費用に多額を費やすことになった。これら史料は、本研究が最終的に作成をめざす博士論文執筆に大きく貢献するものである。 国内では、したがって沖縄と東京近辺での聴き取り調査に留まった。聴き取りでは、南洋群島での日本人教育関係者、教育を受けた人々について聴き取りを進めた。また、本研究の大きな枠組みとなる植民地研究について、日本での研究動向を『別冊歴史読本』(2000年6月)にまとめた。南洋群島の制度そのものに関する戦前期の学界、言論界の議論についても調査を進め、その成果は日本国際政治学会2000年度研究大会の部会(C-3)で発表され(5月21日)、『国際政治経済研究』(2001年3月刊行予定)に活字化される。さらに、沖縄大学地域研究所では「沖縄とミクロネシア」と題する研究報告を行い(2000年10月7日)、南洋群島での沖縄出身者の暮らし、政治・経済活動、企業や南洋庁の沖縄出身者への政策から、近現代日本と沖縄、ミクロネシアとの関係を明らかにした。 現在、これら調査を踏まえて、南洋群島への現地住民政策に関する論文と、1935年〜アジア・太平洋戦争開戦前までの南洋群島統治についての論文を執筆中である。
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