本年度は、エコラベリング制度導入の効果について、経済学の理論を応用して分析を行った。 最初に、閉鎖経済、完全競争の前提条件の下で、エコラベリング制度の導入が汚染排出総量に与える影響を分析した。また、生産段階において排出される汚染と消費段階において排出される汚染とを区別し、これまで多用されてきた直接規制との比較を行った。結論としては、第1に、エコラベリング制度の導入が必ずしも汚染排出の総量を減少させないということが明らかとなった。これは、各消費者が自身の消費が社会全体に与える環境負荷を考慮に入れて消費量の決定を行うとは限らないためである。第2に、一定の条件の下で、消費から発生する汚染については、エコラベリング制度は直接規制よりも社会厚生の観点から望ましいが、生産から発生する汚染の場合には直接規制のほうが望ましいことが明らかとなった。(商学論集に掲載) 次に、不完全競争市場で、貿易が行われている状況のもとで、エコラベリング制度導入の効果を分析した。各企業が、エコラベリングを自社の製品に貼付するかどうかの意思決定を内生化している。つまり、より大きな利潤が得られる財(ラベルの貼付された財と貼付されない財)の市場に参入する。ここでも、消費から発生する汚染と生産から発生する汚染とを分けて考えている。制度の導入が自国企業の利潤、および汚染排出総量に与える影響は、(1)汚染が発生する段階、(2)外国においても同様の制度が導入されているかどうか、(3)自国の消費者が外国のエコラベルを認識しているかどうか、の3点に大きく依存している。状況によっては、エコラベリング制度の導入が必ずしも自国企業の利潤を減少させない、また、汚染排出総量を減少させないことが明らかとなった。(後半部分は、来年度中に発表の予定である。)
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