1)個人能力に関する遂行情報学習と逐次的努力水準決定、およびその結果決定される個人間労働収入格差の発生に関して、日本と米国のミクロデータを用いて実証分析を行った。日本については国民生活基礎調査を基にした対数所得分散の岩本推計、米国についてはPanel Study of Income Dynamics(PSID)を用いて推計を行った。その結果、日本は米国に比べて相対的に賃金に含まれるノイズ(不確実性)が大きく、個人間の能力(生産性)分散が小さいことが明らかとなった。この違いによって、日本では努力格差が遅くに発生し労働収入の格差を40代半ば以降に拡大させ、米国ではその逆に30代半ば以前に格差が発生拡大する観察事実を説明できる。現在、英国・ドイツのデータを用いた国際比較を検討すると同時に、日米での実証結果の頑健性を検証している。 2)経済主体が情報学習を行うのに必要な主観的モデルの危険回避度が事後的な情報学習の速度や効率性に与える影響に関する理論・実証分析に関しては、現在、その理論的考察を進めている最中である。危険中立性を仮定したベイジアン情報学習モデルに関しては、インドAdditonal Rural Incomes Survey(ARIS)を用いた家計教育投資行動の実証で試みた(現在、頑健性を再度検証している)。実証応用で用いるデータは別になる可能性が高いが、これと比較可能な危険回避的モデルを構築するか、ノンパラメトリック手法の応用を検討し考察している。
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