研究概要 |
本研究は、ある国の経済政策や技術進歩が他国にどのように波及していくかを分析することを目指している。そのための第一段階として、まず閉鎖経済モデルを構築し、(1)根本的な技術革新が自国内で経済活動に対してどのような影響を及ぼすかのか、(2)財政政策が金利や資本蓄積にどのような効果を及ぼすのか、の二点についての分析をおこなった。その結果、(1)に関しては、根本的な技術革新は景気循環を生み出し、場合によっては非常に多様な動学経路を生じさせるという結果を得た。また、(2)に関しては、財政拡張政策が資本蓄積に対して及ぼす影響は、政府支出の種類によってまったく異なったものになりえることを示した。この結果は、一時的な財政拡張期に金利が低いというよく知られた、しかし標準的モデルによる予測とは矛盾する事実に一つの理論的説明を与えるものである。 次に、これらの結果を踏まえて、二国モデルを構築し、政策・技術の国際間波及を分析することを試みている。まず、ある国の財政拡張政策が他国の経済厚生に与える影響を分析し、政府支出の種類、その国が債務国であるか債権国であるか、によって異なり得ることを示した。また、ある国の資本課税が、他国に対してどのような影響を及ぼすかについても分析を行い、(i)自国の資本税率の上昇は他国の経済成長率を下落させる,(ii)経済厚生に対しての効果は、国・世代によって大幅に異なる、という結果も得ている。さらには、環境汚染も考慮に入れた先進国と発展途上国からなる二国経済モデルを用いて、先進国から途上国への技術移転政策の有効性についても検討を行っている。このモデルにおいては、京都会議で導入が決定されたクリーン開発メカニズムが、どの程度の有効性を持っていることを、シミュレーション分析によって明らかにすることを試みている。
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