本研究では、資産の所有が効率性に与える効果を分析する際の有益なフレームワークである不完備契約理論を利用し、企業による海外資産の買収についての分析を試みている。平成12年度の実績はそのための理論モデルを構築したことである。 本研究で提示したモデルでは、各企業の経営能力および各国の税率を海外での資産購入を決定する重要な変数として扱っている。このモデルでは、受入国での実物資本の蓄積には必ずしも直結しない買収による直接投資と、新規の工場建設など受入国での資本蓄積となる直接投資との違いを明確にして、直接投資の決定要因を扱った。このような分析による第一の貢献は、買収による直接投資ではたとえ税額控除制度が導入されていても、資本輸出の中立性が成立しないことが明らかとなったことである。第二の貢献は、友好的な企業買収と敵対買収を明示的に区別したことによって、それぞれの決定要因および買収のタイプによって資産の取引価格が異なることが明らかになったことである。 平成13年度においては、上記の結論を活用し、各国の租税やその他の政策が直接投資にどのような影響を与えるかを実証的に分析する。
|