研究概要 |
本研究では不動産市場についてヘドニック・アプローチ(HA)による実証分析を行うこと,および計量経済学的方法を改善することを試みる. 平成12年度は実証分析に関しては,もっぱら品質調整済み価格指数の推定を対象とした.地理情報システムを用いながら予備的分析を行った後に,セミパラメトリック法を用いた分析を行った.その結果,少なくとも分析対象としたバブル期の東京都心部の中古賃貸オフィスに関しては,個々の物件には減価償却による品質変化があるものの,市場全体では品質変化は軽微であり,HAに依らずとも価格指数推定の一致性が保たれることが明らかになった.ただし,推定量の有効性の観点からは,(特定化の誤りがある場合でも)品質特性を説明変数として利用した方が好ましいことが明らかになった.また,(従来HAと特定銘柄方式ではあまり考慮されてこなかった)サンプル・セレクション・バイアスの問題,およびパネルデータの利用についても検討し,同様のデータを用いて実証分析を行い,無視できない問題(推定量の偏り)が生じ得ることが明らかになった. パネルデータのための回帰微係数のノンパラメトリックな推定法の開発については,既存の方法に簡単な修正を施すことでより有効な推定量が得られることが理論的に明らかになり,計算実験の結果も良好であった.さらなる修正と計算実験を現在進めているところである. HAは環境価値評価方法としても有用であるが,平成13年度には廃棄物処理施設など迷惑施設の立地と不動産価格との関係の分析を計画している.その準備として(HA以外の方法ではあるが)廃棄物処理についての実証分析も行った. これらの研究成果の一部は,論文としてまとめ,学会・研究会等で発表した.
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