研究概要 |
伝統的な、√<n>-consistentで漸近正規性をもつパラメトリック推定量に関して、エッジワース展開とブートストラップ分布が推定量の分布を近似する上で漸近的に同等の精度を有することは良く知られている。本研究は、√<n>-consistentで漸近正規性をもつセミパラメトリック推定量が同様の性質を有するかどうかの分析を試みる初めての研究である。 Powell,Stock and Stoker(1986)はSemiparametric Averaged Derivative推定量が√<n>-consistentで漸近正規性をもつことを証明した。同じ推定量に関して、Robinson(1995)は最初の高次漸近特性Berry-Esseen boundを導出し、Nishiyama and Robinson(2000a)は、推定量の漸近分散で標準化した統計量に関してその1階のエッジワース展開を導出した。更にNishiyama and Robinson(2000b)は漸近分散をそのジャックナイフ推定量で置き換えてstudentizeした統計量に関して同等のエッジワース展開を導出した。 本研究では、この推定量を漸近分散で標準化した統計量のブートストラップ分布が、Nishiyama and Robinson(2000a)で示された一階のエッジワース展開と漸近的に同等の近似を与えることが解析的に証明された。また、その結果に基づいて、トービットモデルベースでのモンテカルロ実験が行われ、小標本特性に関する考察も試みられた。その結果、正規確率変数から生成されるトービットサンプルに関して、データ数100程度でもかなり良好な近似が得られること、また全般的にブートストラップ分布の方がエッジワース展開よりもバンド幅に関してロバストな近似が得られることが示された。
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