研究概要 |
データを統計的に解析する際の統計的モデルには、データを生成するメカニズムに関する知識をどの程度事前に想定するかに応じて、パラメトリック、セミパラメトリック、ノンパラメトリック法の3種類のモデルがある。一般に、セミパラメトリックモデルのパラメトリック部分の推定量は、標準的なパラメトリック推定量と同等の収束スピードを有することが多いが、小標本の場合には、その中に含まれる収束スピードの遅いノンパラメトリック推定量の影響を受けることが多く、実際にデータに適用する際には一次の漸近特性をそのまま適用することが適切でないことが多い。そのため、セミパラメトリック推定量の高次漸近理論を調べる必要性が指摘されてきた。 本研究は、Single Indexモデルと呼ばれるセミパラメトリックモデルが含む有限次元パラメータ部分の√<n>-consistentな推定量のうち、Averaged Derivativeによる推定量(ADE)をとりあげ、その高次漸近特性を調べるものである。平成12年の研究では、ADEの一階のエッジワース展開が導出された。ADEは形式上U統計量と同じ形を有しており、導出されたエッジワース展開には、U統計量と対応する修正項以外にノンパラメトリック密度推定に起因するバイアス修正項と分散修正項が必要であることがわかった。更に、13年の研究ではADEのブートストラップ分布のエッジワース展開も導出されt,それがADE推定量のエッジワース展開と漸近的に同等であることが示された。すなわち、ブートストラップ分布は、ADEの小標本分布の近似としてはエッジワース展開と同等であることが示された。また、それに付随する成果として、正規近似誤差を最小にするようなbandwidthの選択法を提案した。
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