研究概要 |
日経Raderのサーベイデータに基づいて,日本の家計のボートフォリオ選択の状況を分析し,年齢別・資産水準別の資産選択に特に注目した結果,以下のような点が観察された. 1.資産全体に占める株式の割合は,年齢による顕著な変化はない. 2.株式の割合は,資産水準が非常に低い水準から若干の上昇すると増加するが,あるレベルを超えると顕著には変化しない. 3.家計のボートフォリオに占める不動産の割合は,資産水準が低い場合には山形を辿るが,資産水準が十分に高いと年齢とともに単調に増えつづける. 4.日本の家計のボートフォリオ選択における,不動産の存在はあまりに重要である.特に,持ち家の取得は多額の頭金を必要とするため,通常のボートフォリオ選択理論が想定するような状況が成り立っておらず,そのような理論をそのまま応用するには問題点が多いと考えられる. 最後の点は,今後の日本の株式市場の活発化が,代替資産としての不動産市場の方向性に依存していることを示唆している.すなわち,より効率的な貸家市場が発達し,持ち家取得に関連する資産市場の不完全性が解消されないと,十分な家計の資金が株式市場に流入しない恐れがある.同時に,持ち家取得によって多額の名目負債を抱え込むことによって,家計はインフレ・リスクに対して,非常に偏ったポジションをとっていることになる.このような状況の改善のためにも,効率的な貸家市場の発展は非常に重要であるといえる. なお,来年度は総務庁貯蓄動向調査のデータに分析を拡大する予定である.
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