本研究の目的は、貨幣経済の浸透が農民の貧困状況や消費・投資行動、さらにはコミュニティにおける伝統的な規範にどのような影響を与えたのかを理論的・実証的に行うことである。初年度の平成12年度は、主として(1)理論枠組みの構築、(2)入手可能な二次資料・公表統計の収集・整理と統計的分析、(3)予備的なフィールド調査、を行った。 (1)理論枠組みの構築に関しては、主として貨幣需要関数のミクロ経済的な基礎付けについて既存文献をまとめると同時に、統計的分析のためのフレームワーク作りを行った。 (2)既存統計の収集については、世界銀行調査局エコノミストに対して数回に渡って貨幣経済の発展過程に関する研究の助言を求めると同時に、アジア諸国、具体的にはパキスタン、バングラデシュ、フィリピン、インドネシア、の貨幣に関する統計の収集協力を依頼し、必要統計の収集整理と時系列分析を用いた貨幣需要関数構造変化の分析を行った。 (3)予備的なフィールド調査については、国際稲作研究所(IRRI)の研究員の協力を得て、フィリピン中部ルソン地域ヌエバ・エシハ州の農業家計を対象として、約10日間にわたる基礎的な家計調査を実施した。この調査においては、とりわけ家計の資金貸借状況についての質問を入れることにより、貨幣経済の浸透度が土地や資産の所有状況など家計の属性によって異なることを確認している。
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