研究概要 |
平成13年度科学研究費補助金の交付を受けた研究において、我々は以下のような研究成果を得た。 今年度は、中国における集団所有制郷鎮企業の民営化問題を中心に研究活動をおこなった。昨年度以来2度の現地での企業・地方政府機関調査(江蘇省無錫市・上海市を中心とした蘇南地域)をおこない、また企業マイクロデータによる計量経済学的分析もおこなった。まず我々は(旧)集団所有制郷鎮企業においては、民営化後の地方政府-企業関係は政府による企業への資金面での援助をはじめとして依然として密接であり、地方政府側も自己管轄下の郷鎮企業を財政資金源として重要視し続けていることを明らかにした。この成果については、国際学会・研究会で各1回ずつの報告がおこなわれ、近く法政大学日本統計、研究所『所報』に掲載予定である。この成果に引き続き、現在は集団所有制郷鎮企業民営化の目的や現状を形成している要因を、企業利潤関数推定により明らかにしつつある。 次に、集団所有制郷鎮企業民営化問題と密接に関連した課題として、中国における企業金融の近年における変化を投資関数推定により考察した。それによると、1994年以来の中国における第2段階の金融改革は、国有企業-非国有企業間の融資における差別的取り扱い(lending bias)は解消させないまでも、郷鎮企業に代表される非国有業内での投資効率を上昇させたことがあきらかになった。この成果は、既に一回の研究報告がおこなわれている。 また、政府と国有企業の契約形態が如何にして国有企業の非効率性を生み出したかについての理論・実証研究が再構成されYano, Go and Maho Shiraishi(2001), "State-Owned Enterprises and Their Contract with Government in China : An Econometric Analysis."として研究書中に論文掲載された。
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