今年度は研究期間の初年度に当たるので、資料収集に重点を置いた。その際旧北海道拓殖銀行(拓銀)の資料は、研究費が交付される直前にある程度収集することができたので、北海道・北洋漁業に進出した北陸地方の船持商人の資料収集を精力的に進めた。具体的には、5月に福井県河野村の右近家と新潟県能生町の伊藤家の資料調査・収集を行い、6月と8月には、明治後期から大正期にかけて北洋漁業への進出者を輩出した富山県の資料調査を行った。右近家は明治20年代に北海道増毛郡に漁場を開設し、伊藤家も明治20年代に小樽に本店を移して北海道留萌郡に漁場を開設した。またこれらの資料調査をマイクロカメラによる写真撮影として行うため、マイクロカメラを購入した。 今年度後半は、撮影したフィルム資料をプリントして分析を始めたが、現在のところまとまった分析結果を出すまでには至っていない。ただし拓銀小樽支店が小樽近辺の漁民に対し、漁場に抵当権を設定して漁業金融を盛んに行っており、それらの漁場が大正期以降に拓銀小樽支店へ所有権が移転されていったことが明らかになった。次年度はその背景を探るとともに、北海道・北洋漁業に拓銀の果たした役割を解明する予定である。 なお北海道の漁民の資料については、江差町の横山家の資料がマイクロフィルム資料として刊行されているので、それを今年度購入して次年度に詳細に分析することにした。また北海道開拓記念館にある小樽市の有力漁家であった青山家の資料も、次年度に精力的に収集する予定である。
|