本年度は、来年度に実施する実証研究のための基礎作業として、主に「サステイナブル・シティー」研究を中心に諸文献のサーベイを行った。そして、サステイナブル・シティーとはいったい何なのか、また、サステイナブル・シティーを理念型として、欧州でどのような社会実験が行われているのかを整理した。サステイナブル・シティーとは、EUの財政資金である構造基金によって支援を受けながら進められている地域的取り組みの一つである。EU経済統合によって一方で成長は促進されるであろうが、他方で地域間経済格差や環境の悪化が懸念されている。したがって構造基金はこれらの問題を解決するための財政資金としての性格を持っている。 諸文献に共通する点をまとめると、サステイナブル・シティーとは、(1)自動車依存型社会からの脱却を図ることによって環境を改善し、(2)リサイクルや廃棄物の発生抑制を進めることによって循環型社会の形成を図り、(3)再生可能エネルギーを始めとする地域的なエネルギー管理政策を進めることによって温暖化ガス排出を削減し、(4)都市アメニティーを高めることによって中心街区を活性化し、(5)環境保全型産業構造への転換を促し、新産業を生み出すことで雇用を創出する、といった政策体系に支えられて、都市構造を持続可能なものへと転換させることを目指している。 来年度は、このようなサステイナブル・シティー構築の試みが、どのようにしてEUの構造基金によって支えられているのか、そしてこれらの社会実験がどの程度、実際に成功を収めているのかを実証研究するという課題が残されている。
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