本研究は、政府間の情報の完全性を仮定しない場合にどのような問題が生じるかを明らかにすると同時に、ゲーム論等を用いることによって社会的に最適な状態に導くようなメカニズムをデザインすることを目的にしている。本年度は、問題点の抽出を日本国内のデータと理論分析によって行った。中央と地方レベルでの情報の非対称性を測る一つの尺度として、情報面で優位に立つ地方レベルの公的な企業・団体が情報の非対称性を戦略的に用いて中央からの補助金を不正に受給する件数、金額が挙げられよう。会計検査院のデータを下に不正給付の件数、金額、タイプを検討すると、一つの知見として介護や老人福祉などより地域に密着したサービス提供を目指す部門での不正受給が問題化していることが読み取れる。これは、地方レベルの公的部門が提供するサービスのタイプ・種類によって、情報の非対称性の問題がどれほど重要視されるべきかが影響されることを示唆している。 そこで、公共事業のタイプを含んだ理論モデルを構築し、中央政府と地方政府の間での権限の在り方を問うた。こちらは最終的には論文として刊行されていないが、現段階では中央政府と地方政府の費用構造に応じた最適な権限配分のあり方を導出している。
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