平成12年度の日本の金融界では、前年度から続く大型の金融再編の動きに着実な進展が見られ、みずほフィナンシャルグループが正式に発足した。さらに、平成13年4月をにらんで大銀行間での統合・合併(三井住友銀行、UFJグループ、東京三菱グループなど)の具体化が進んだ。われわれが研究対象にした金融コングロマリット化に関しても、現実化の方向で着実に進んでいる。銀行間での統合の組み合わせはほぼ出尽くしたと考えられるが、今後は、いよいよ、大手保険会社と大手銀行グループ間での合従連衡が話題になってくるものと思われる。平成12年度の本研究プロジェクトの第一課題は、金融コングロマリット化の現実を把握することであった。そのために、新聞雑誌の関連記事を収集整理するだけでなく、生命保険会社、損害保険会社、銀行のディスクロージャー資料(250社以上分)を集めた。第二の課題は、金融コングロマリットを分析するための基本分析ツールの開発であった。この点では、いわゆるポートフォリオ理論を応用した分析手法に注目して、米国での研究をサーベイした。さらに、それを応用して、保険会社、銀行、証券会社という3つの金融業態の結合がどのような結果をもたらすかを日米について実証的に分析した。日本の場合の結果のみを紹介すると、損害保険業のリターン・リスク構造は大変望ましいものであったので、基本的に他業態との結合が改善をもたらす可能性は小さい。しかし、個別の具体的な組み合わせを考えると、リスク・リターン構造が大きく改善している事例も見られた。平成13年度の研究に向けて、金融コングロマリット規制を情報開示の視点から分析することを考えている。そのため、金融コングロマリットに関する情報開示の規制が米国やヨーロッパでどのように進められているかの情報を集めているところである。
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