高等教育改革に向けて、どのような教育政策が望ましいかを分析するための経済理論モデルを構築することを目的として研究を行なっている。 今年度はまず、関連のある分野や過去の文献図書を購入し、経済学のフレームワークで教育政策を扱うことの理論的根拠を明らかにした。また、高等教育、主に大学教育に関する日本での公的予算配分の現状および各家庭による教育支出の現状を整理した。さらに大学教育の価格として授業料データを収集し、大学への需要の変化をはかるため、受験者数・合格者数・入学者数などの時系列データを収集、整理した。そしてそれらのデータを、大学の多様化を考慮するために国立大学と私立大学、さらに地方圏に立地する大学と中央圏に立地する大学など様々な分類を行ない、それに応じて大学が抱える問題点と役割を整理して経済理論モデルの構築を試みた。その際、個人は同質ではなく大学に対する非金銭的選好(大学の立地条件、知名度、伝統など)が異なっていると想定し分析を行なった。その結果、近年の18歳人口の減少は全ての大学に同様の影響を与えるのではなく、中央圏よりも地方圏、伝統校よりも新設校に対して、その授業料と教育の質をより大きく低下させるという負の影響を与える可能性を示した。これらの分析はまだかなり単純化されたモデル設定のもとで行われたものであるが、今後はこれをさらに発展させ最適な教育政策についての分析を行なう予定であり、そのため現在はMathematicaを用いて大学への最適な予算配分についてのシミュレーション分析を行なうための準備を進めている段階である。 また常に研究方法や結果の解釈などについて幅広く他の研究者の意見を聞くため、他大学に出かけて討論を行なっている。
|