高齢化の進展に伴い、医療・介護サービスの需要が増加するにつれて、医療・介護サービスに対する人々の関心は高まりつつあるように思われる。医療・介護サービスは、その固有の性質から、需給を市場原理に任せることが適切でないと考えられてきた。したがって、現実の医療・介護制度には、規制等の公的な介入を広範に見ることができる。 本研究では、そうした公的介入の中で、旧来の杜会福祉制度や公的介護保険の要介護認定のプロセスで利用されている、"Tagged System" (Akerlof 1978)の資源配分メカニズム、所得分配メカニズムとしての役割を明らかにすることを目的とした。本研究には、2つの成果がある。 第一に、Tagged systemにかかわる文献のサーベイを行い、サーベイ論文を作成した。主要な結論は、tagをされる消費者に関する情報の価値と情報収集コストをどの様に考えるかが、tagged systemの機能のポイントになるということである。 第二に、Tagged systemを採用しているサービスを具体的に例に取り上げて、その実態について、理論的に制度評価を試みたことである。筆者の関心は、高齢者介護サービスにあるが、データ収集の可能性から、精神医療・介護をも例に取り上げた。精神医療・介護については、千葉県をデータ採集地として、アンケートに基づいた実証研究を計画した。理論モデルを組み立て、アンケート作成まで行った。しかし、プライバシーに関わる情報も必要なことから、アンケートの精度を高めるために公的機関との共同調査に乗る形で行うことにしており、今後の課題として残った。
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