外国市場への参入および対外直接投資の理論の体系化の試みは、J.H.ダニングの折衷パラダイムを中心に1985年以降に提示されている諸理論との対比の研究を行っている。ダニングは、近年の文献で折衷パラダイムの骨子である0LIモデルの立地優位、所有優位、内部化インセンティブの各要素と昨今のFDI理論やグローバル競争理論の関係について概説している。しかし、詳細な理論分析は行っていない。それを検証するために、現在、各理論のサーベイを行っている。次年度は、外国市場参入やグローバル競争理論の関係性を明示し体系化をすすめる。また、既存理論が大規模企業中心に理論化されているのに対し、中堅企業の行動も包摂する外国市場参入理論化を試みる。 他方、今日の企業の外国市場への参入や行動に関する実証研究を行うために、アンケート調査を行った。アンケートは、東南アジア地域に製造拠点を展開している日系現地法人413社、および未上場で海外現地法人を所有しているか、輸出比率の高い企業311社を対象に行った。前者のアンケートでは、外部環境変化に関する企業行動と事業展開に対する外国市場規模の変化や競合会社との関係の影響、および親会社とのマネジメントや学習について調査を行っている。後者は、中堅企業が海外市場で行動する場合の競争優位性および海外進出の契機、競争優位性を持続するための組織学習について調査している。アンケートの集計・分析は次年度行い、今日の外国市場参入理論の提示を行う。
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