研究2年目の本年は、昨今の対外直接投資や中堅企業の海外市場参入行動を検証するためのアンケート調査の分析およびヒアリング調査を行った。また、理論研究面では、昨年度行った外国市場への参入および対外直接投資理論のサーベイをもとに、既存の諸理論が、多国籍企業といわれる資本規模が大きく、経営資源の豊富さからくる競争優位性をもつ企業の企業行動に焦点が当てられていたが、昨今の企業行動には、出自国からホスト国へという単線的な投資行動、技術・情報移転ではなくなっていること、また、資本規模、販売規模が小さくても外国市場参入を果たしている企業がふえており、既存の理論に付加する理論の探求を行った。 アンケート調査では、東南アジア地域に製造拠点を展開している日系現地法人413社、および、未上場で海外現地法人を所有しているか輸出比率の高い企業311社を対象に行った。前者のアンケートでは、アジア通貨危機以降の企業経営状況について、アジア通貨危機が日系アジア企業にとって、品質や価格での競争力強化および脱アジア市場の戦略をとることで、従来の競争力を持続させた。また、企業行動が、外国市場参入という2国間市場の概念を凌駕することとなり、既存理論を補完する点が明確になった。また、後者では、国際生産のプロセスと国際販売ルートの関係の理論化の必要性が解明された。 しかし、今回の研究では、それらの事象を理論化するまでには至らなかった。さらに、今後の課題としたい
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