「自律分散的サプライチェーンマネジメント(Supply Chain Management:以下SCMとする)システムの可能性」というタイトルで口頭と論文によって、本研究の一部を発表した。その中で、自律分散的SCMシステムの必要性を説くこと、そしてその基本構造とそれを実現するために有望な技術を紹介した。 まず、自律分散的SCMシステムの必要性である。そのために、流通を構成する「流れ」のひとつである「情報の流れ」を、問題・知識・データ・情報の4つの要素に分けて、詳細に表現した。この表現をよりどころに、ピラミッド型の集中的SCMシステムが非効率となり、ネットワーク型の自律分散的SCMシステムに変容していくことを説いた。しかもこの萌芽的な動きが既に始まっているという事実も示した。 次に、自律分散的SCMシステムの基本単位の基本構造と分散的SCMとして機能する仕組みの概要を示した。ひとつの基本単位の中にはTCP/IPのサーバーとクライアント双方のモジュールを持つ。これらのモジュールを介してインターネット上で複数の基本単位同士が通信しあうことで、あたかも、ひとつのSCMシステムであるかのように機能する。この初歩的なモジュールのプログラムが完成している。 最後に、有望な情報技術である。当初想定していたものと大きく異なる。現在のところ、分散データベース技術としてXML(eXtensible Markup Language)でラッピングされたデータベースと、分散処理技術としてSOAP(Simple Object Access Protocol)が有望である。ただし、これらの技術はいまだに流動的で確実なものではない。また、まだアイデア段階であるが、契約と同時に値段や納期が固定してしまうこれまでの取引とは異なり、値段や納期をある時点まで一定としない可変取引を検討中である。
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