1.先進工業国のうち日本と比較的近い環境保全政策姿勢をとり環境・森林認証制度では一歩先を進んでいるアメリカ合衆国を比較対象に選び、認証制度に対する企業の意識や行動の違いを比較分析すると共に、各種認証制度のコア概念である「認証」の持つ社会記号論的意味と「認証」の社会的信頼獲得ないし信頼醸成過程を個別の認証制度を事例として取り上げながら比較分析することによって、日本における環境・森林認証制度の意義とその社会的特徴に関する議論の前提を提示することを本研究の目的とした。 2.前年度は、環境・森林認証制度の具体的事例として、森林認証制度を取り上げ、比較分析に必要な基礎データの収集を日本企業について実施した。収集するデータは企業や各種機関が作成・公表した定量的データのほかに、本研究のためにデザインされた調査項目に関する定性的データを含み、既存の定量的データの補完を図った。定性的データの収集方法は主に社会学で用いられる方法のうちから面接調査法を基本の方法として選択し、その他の方法(質問表調査法、参与観察法等)を適宜、補完的な手法として採用した。本年度はこれらの調査結果を集計・分析した。 3.本年度は、まず比較対象であるアメリカ合衆国について同様の手法で分析データを収集した。そして、得られた定性的データに既存の定量的データを交え、両国の認証制度間の比較分析を事例研究の手法で行い、事例間の特殊性と共通性を特定し、「認証」のもつ制度としての社会的信頼の形成過程を両国間の事例において検証した。 4.本研究を通じて、日本・アメリカ両国における認証制度に対する企業の意識や行動の類似点・相違点が明らかになった。特に、組織論的な枠組みにおいて顕著な相違点が見られることは特筆に価する。
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