2001年7月、日本でも会計基準設定機構の改革が行われ、米国FASB型の基準設定機関であるASBJが誕生したが、その意義を検討するためには、米国型の会計規制メカニズムを改めて「制度」として問い直す必要があると考えた。そこで、米国の石油・ガス会計基準を手がかりとして、会計政策決定に影響を及ぼす制度的要因について分析を行い、その成果の一部を、2001年7月に神戸大学で開催されたシンポジウム(神戸フォーラム)で報告し、山地秀俊編『マクロ会計政策の評価』第5章「会計政策決定に影響を及ぼす制度的要因:米国の石油・ガス会計基準を手がかりに」として公表した。そこで得られた主要な発見は以下の通りである。 米国では議会の委員会制度、大統領制、連邦制、独立規制機関制度、議事運営規則、などの制度が一体となり、会計政策を方向付けているが、石油・ガス会計の場合は政策管轄のオーバーラップが起こり、政策結果が不安定となった。同様の制度を環境が異なる日本に導入した場合、省庁間の対立という形で、石油・ガス会計と本質的に同じ事態が生じる可能性がある。 以上の分析は、主に実証政治学および規制理論に基づくものであったが、統計的な分析を十分に行うことが出来なかったので、上院の対応について議会記録等(特に点呼投票記録)をもとにロジスティック回帰分析を行った。その結果は、上記の考察内容を補強するものであったので、『佐賀大学経済論集』第34巻5号において「米国における石油・ガス会計をめぐる上院の対応:石油政策に関する投票行動の分析」として公表した。
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