本研究ではサンクコスト概念を手がかりとして、認知科学(認知心理学)やそれからの影響を受けた組織行動論と管理会計論の間を繋ぐ研究を目的とした。 本研究ではサンクコスト効果の原因としてサンクコストが大きいほどその一連の投資から得られると予測される収益が大きいと予測するために、サンクコスト効果が生じるという仮説を立て、実験を行ったが、その仮説は棄却された(静岡県立大学経営情報学部 Working Paper Series0002)。この研究成果は同時期に実施された内外の研究者の研究成果とも一致する。 さらに本研究ではサンクコスト効果のマネジメントについても考察した。継続的な意思決定を中止し、それまで蓄積された資産を利用しなくなるという決定の中でも、内部調達から外部調達へと財・情報・サービスの調達先を変更するというアウトソーシングという経営行動を取り上げ、サンクコスト効果を抑制するためのマネジメント・コントロールについて考察を行った。 当初研究開発型ベンチャー企業数社に対しての調査を試みた。しかし事業ないしは業務からの撤退もほとんどなく、また企業側でアウトソーシングを新規事業活動開始の際の外部事業委託として捉えていたために、本研究課題に対して十分な成果が得られなかった。しかしネットワーク型の事業展開についての興味深い知見を得た(経営行動学会2001年度全国大会報告)。 また(実験では棄却されたが)直接のベネフィットの測定が難しいという意味でサンクコスト効果を生むと考えちれる知的資産のアウトソーシングについても理論的に考察を行った。即ちアウトソーシングからの知的資産に対する効果をバランスト・スコアカードによってマネジメントを行うことの可能性について論じた(日本管理会計学会2001年度全国大会報告他)。
|