当初の研究計画通り、平成12年度は本研究をおこなうための環境整備を主に行った。まず研究室内において、小規模ネットワーク・システムを構築した。実際のネットワーク開示システムをシミュレートするために、複数のコンピュータをTCP/IPプロトコルで接続し、擬似的にインターネット環境を作り出すことに成功した。さらに、研究室内ネットワーク・システム上に、WWWサーバーを構築した。このWWWサーバー上に財務会計情報をプールしたうえで検索システムを構築し、擬似的にEDGARシステムと同様の環境を構築することにした。残念ながら検索システムの構築にはまだ成功していないが、ネットワーク開示をシミュレートするためには、十分な環境を整えることができた。 米国SECのEDGARシステムでは、SGMLというマークアップ言語により、財務情報を記述するが、近年ではSGMLの発展系とも言えるXMLという言語が主流になりつつある。SGMLもXMLも共に、文書構造を記述するDTDと呼ばれる部分と、タグを埋め込んだ文書(インスタンス)部分がある。近年では、財務情報の記述に特化したXBMLというマークアップ言語が注目されているが、これはXMLのDTDの一種である。この共通のDTDを使うことによって、財務報告内容の標準化がはかられるという側面を持っているため、単なる情報技術の一つとして看過することはできない。XBMLの策定は、会計情報の開示基準としての役割を果たしうることが明らかになった。 次年度では、今年度に整備されたネットワークサーバー上に、このXBMLを使って財務情報の蓄積を試み、開示するにあたって直面する課題や開示内容の拡張可能性について、検討する予定である。
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