総実代数体のGreenberg予想解明に必要と思われる、代数体の岩澤加群とp進特殊関数に関する研究を中心に行った。 まず一つ目の成果は、Greenberg予想が成立する実2次体の無限族の存在に関する仕事であり、これまでの筆者の研究成果で無数に存在することはわかっていたが、更に詳しくλ_3=μ_3=ν_3=0と、p=3に対するすべての岩澤不変量が零である実2次体の割合が全実2次体の17/24以上にのぼることが確認できたことである。この中にはp=3が分解する実2次体も9/34ほど含まれている。この研究成果はアメリカ数学会紀要に発表した。 もう一つの成果は、実2次体におけるGreenberg予想成立のための必要条件に関する福田-小松の一定理を、部分的にではあるが、一般の総実代数体にまで拡張することができたことである。その命題を簡単に述べれば、p進単数基準のp進付値の値が小さければ多くの場合にGreenberg予想は正しい、というものである。ここまでの部分的研究成果は、韓国ソウルにある韓国高等研究所の数学セミナーで報告した。完全な一般化に到達するためには、p進単数基準の"p-単数版"が必要であると思われるが、これについては以前の結果も込めてすべて一般化する必要があり、現在のところまだはっきりした姿はわかっていない。そのためこれは来年度への継続研究課題としたい。 今後は、この継続研究課題に加えて、p-(アンビク)イデアル類群の構造研究、半整数重みの保型形式とその岩澤加群への応用、および、岩澤加群のいくつかの特殊元についての研究を行っていきたいと考えている。
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