本年度も昨年度に引続き、総実代数体のGreenberg予想解決に必要と思われる基礎理論の構築、特に代数体の岩澤加群とp進特殊関数に関する研究を中心に行った。 主な成果は、昨年度に行った、実2次体におけるGreenberg予想成立のための必要条件に関する福田-小松の定理の、一般の総実代数体への拡張を、より詳しいものにしたことである。つまり、Greenberg予想の成立だけでなく、そのZ_p拡大体の全イデアル類群およびその重要な部分群の位数の決定まで行った。これはまだ完全な一般化と呼べるものではないが、基礎体の情報(イデアル類群とp進単数基準)からZ_p拡大体の岩澤加群の構造がわかるという点で興味深い。また、アーベル体だけでなく、一般の非ガロア拡大にも適用できる面は重要だと思う。コンピュータ計算による数値実験はこの成果を得るために非常に有効だった。それにより多くの具体的例も見つけることができた。ただ、不分岐拡大の構成や全Z_p拡大体の岩澤加群の構造を知るにはまだ道具が不足しているように感じた。 この成果で利用したアンビグイデアル類群とp進特殊関数の特殊値の関係についての基礎定理は、日本数学会発行のAdv.Stud.Pure Math.30号で発表した。またGreenber予想成立に関する必要条件に関する成果は、フランスのリールで開催された第22回Journees Arithmetiques(ヨーロッパ地区で隔年に開催される数論の国際集会)で発表した。
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