平成12年度の研究では、リジッド・コホモロジーのコホモロジー的降下について研究し、以下の結果を得た。 1.コホモロジー的降下理論の一般論と相対リジッド・コホモロジーへの応用 2.エタール超被覆がコホモロジー的降下に関して効果的であること 3.完備超被覆がコホモロジー的降下に関して効果的であること 1と2については、パドバ大学のキアレロット教授と共同で研究した。2と3から、対応する超被覆に関するリジッド・コホモロジーのスペクトル系列が得られる。アルタレーションを用いると、代数多様体の完備超被覆で各段階が非特異なものが得られるから、分離的代数多様体のリジッド・コホモロジーの有限性が結論される。リジッド・コホモロジーの有限性は、ベルテロとグロッセ・クローネにより既に知られているが、この方法はより関手的な方法であり見通しがよくなった。また、エタール超被覆に関する結果は、ログクリスタリン・コホモロジーとの比較定理等に応用を持つ。 リジッド・コホモロジーは、正標数代数多様体の有限性、ポアンカレ双対性などを満たす良いコホモロジー理論と思われている。良いコホモロジー論ならば、エタール超被覆や完備超被覆に対してコホモロジー的降下は成り立つべきである。特に、完備超被覆に対する結果は、コホモロジーの様々な性質を非特異代数多様体の場合に帰着する事が可能になることを意味していて、応用性が広い。上に挙げた結果は、リジッド・コホモロジーが良いコホモロジー理論である一つの証拠であり、それを示すための重要な手段でもある。
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