本研究調査の目的は、スタンレーライスナー環のBetti数についてその可換環論的、組合せ論的性質を考察することであり、また、それと一般の次数つき環のBetti数との関係を探ることにあった。本年度は、Betti数を研究する上で重要な不変量であるregularityについて重点を置いて研究した。 このregularityに対して基本的な問題は、それを他の環論的不変量で評価することである。報告者は、数年前、スタンレーライスナー環のdepthとそのアレクサンダー双対複体のスタンレーライスナー環のregularityの間の関係を定式化した。そのことにより、regularityの問題をdepthの問題に帰着させて研究することが可能になり、Eisenbud-Goto予想のモノミアル版について肯定的に解いた。本年度は、さらに考察を進め、モノミアル版のEisenbud-Goto不等式において、等号が成立する様な単体的複体について分類した。そして、それらのスタンレーライスナー環のヒルベルト関数、ローカルコホモロジー、極小自由分解のBetti数等を求めた。その結果、そのようなものは、regularityが3であるようなものを除いて、あるいは、セールの条件S2を満たさないものを除いてCohen-Macaulay性をもつことがわかった。また、結果として、それらはstretched Cohen-Macaulayスタンレーライスナー環の分類を与えていることもわかった。 他方、モノミアルイデアルの和のregularityの評価についても考察し、算術的次数を用いた評価を得た。この証明も、前述のアレクサンダー双対複体を用いて行った。
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