本研究調査の目的は、スタンレーライスナー環のBetti数についてその可換環論的、組合せ論的性質を考察することであり、そこからグラフ理論・組合せ論的応用を導くことであった。 本年度は、スタンレーライスナー環の極小自由分解の中でも特に2線形部分と呼ばれる部分のBetti数について重点を置いて研究した。Betti数に対する基本的な問題は、他の環論的不変量でその上限を評価することである。 報告者は、単体的凸多面体に付随するスタンレーライスナー環の2線形部分のBetti数の上限をその凸多面体の次元と頂点数を用いて与えた。また、上の評価において、ちょうど上限を与えるものはスタック多面体に付随するスタンレーライスナー環であることも示した。 一方、純で強連結な単体的複体に付随するスタンレーライスナー環の2線形部分のBetti数についてもその上限をその単体的複体の次元と頂点数を用いて与えた。また、上の評価において、ちょうど上限を与えるものは高次元木に付随するスタンレーライスナー環であることも示した。 グラフ理論における応用として、誘導部分グラフの平均連結成分数という概念を導入し、対応するスタンレーライスナー環の2線形部分のBetti数との関係を研究した。そして、その結果として、単体的凸多面体の辺グラフ及び、純で強連結な単体的複体の1骨格について誘導部分グラフの平均連結成分数の上限を与えた。
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