研究概要 |
本年度は主に安定mod p森田-Mumford類の非自明性,閉曲面の写像類群の有限部分群の森田-Mumford類と同変ボルディズムとの関係,曲面束の整係数Riemann-Roch公式の三つの課題を中心に研究した.それぞれの課題について得られた成果を項目にわけて以下に述べる. 第1に任意の素数pに対して安定mod p森田-Mumford類が非自明であるための十分条件を得ることができた.証明は各pに対して写像類群の特別な巡回部分群を構成することによる.上の条件は十分条件でもあることが予想されるが,特別な場合に予想が正しいことを証明した. 第2に写像類群の有限部分群の森田-Mumford類の性質を,同変ボルディズム理論の観点から明らかにした.まず有限部分群の奇数次森田-Mumford類が同変ボルディズム不変量であることを証明し,さらに奇数次森田-Mumford類が(位数2の元を法として)同変ボルディズム類のG-符号数で決まることを,不動点データの性質とG-符号数の値に関する整数論的な事実を用いて証明した.この結果を用いて多くの有限部分群に対してその奇数次森田-Mumford類が自明であることを示した. 第3に河澄響矢氏と共に写像類群の巡回部分群に対し,森田-Mumford類とNewton類に関する整係数Riemann-Roch公式が成立することを証明した.これはGrothendieck-Riemann-Roch公式の整係数コホモロジーへの一般化に向けた重要なステップである.証明にはG-符号数の既約指標への分解とBernoulli数の整数論的な性質(Voronoiの恒等式など)を用いる.さらに写像類群全体に対して整係数Riemann-Rochの公式が成立すれば,第1項に述べた予想が公式から導かれることを証明した.
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