研究概要 |
これまでの研究から続くような形で,可積分系理論的なアプローチから曲面の微分幾何についての研究を行った.ユークリッド空間内の平均曲率一定曲面(CMC surfaceと略す)は,平均曲率が0でない場合,古くから可積分系理論の分野で知られているsine-Gordon方程式として記述される.ユークリッド空間内のCMC surfaceの自然な一般化としてBonnet曲面(局所的に非自明に等長的に変形できる曲面)やharmonic inverse mean curvature surface(平均曲率の逆数が調和関数となる曲面,以下,HIMC surfaceと略す)とよばれるものが定義される.これらの曲面族は曲率線に沿った等温座標系がとれる,isothermicとよばれる条件の下で,Hazzidakis方程式とよばれる常微分方程式によって記述されるが,この方程式は可積分系理論の分野で良く知られているPainleve方程式として記述されることが最近になってBobenko-Eitnerにより示された.Bonnet曲面やHIMCsurfaceは定値計量とは限らない3次元空間形内の曲面に対しても定義される.そこで,不定値計量をもつ3次元空間形内の時間的なHIMC曲面について考察し,それに対するLax方程式やその解から曲面をあたえる公式である,immersion formulaを求めるといった,定値計量をもつ空間形内のHIMC surfaceと同様の性質について調べる他,時間的な曲面特有の現象についても調べた.以上の結果については,現在,福岡大学の井ノ口順一氏との共著で投稿中である.
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