研究概要 |
これまでの研究から続くような形で,可積分系理論的なアプローチから曲面の微分幾何についての研究を行った.3次元Euclid空間内の平均曲率一定曲面は,平均曲率が0でない場合,古くから可積分系理論の分野で知られているsine-Gordon方程式として記述される.平均曲率一定曲面の自然な一般化としてBonnet曲面(局所的に非自明に等長的に変形できる曲面)や調和逆平均曲率曲面(平均曲率の逆数が調和関数となる曲面)とよばれるものが定義される.特に,調和逆平均曲率曲面は,1994年にBobenkoによって3次元Euclid空間内の曲面の場合に定義された比較的新しい曲面族であり,Fokas-Gelfandによる特徴付けを経て,一般の3次元空間形内の曲面の場合に筆者により定義された.これらの曲面族は曲率線に沿った等温座標系が取れるとき,Christoffel変換とよばれる曲面の変換により互いに移り合うことが知られていた.今年度では,調和逆平均曲率曲面が曲率を用いて、表されるある量(3次元Euclid空間内の曲面の場合は主曲率の比)を保つような共形的変形をもつことに注目し,逆に調和逆平均曲率曲面をこのような量を保つ曲面の変換を許容するものとして特徴付けた.これは接線叢にある条件を加えた曲面同士の間の変換が存在するならばそれぞれの曲面のGauss曲率は負定数であるというBacklundの定理を想起させるが,調和逆平均曲率曲面に対してもより具体的に幾何的な特徴付けがされ得ることが期待できる.
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