研究概要 |
本年度は「相転移の確率過程の立場からの研究」というテーマに沿って2つの研究を行なった。ひとつは非平衡な状態が時間と共に平衡状態(Gibbs-測度)に近づく迄の時間(緩和時間)と相転移の関係を調べる方向。もうひとつはwetting transitionのrandom walkを用いた解析である。Wetting transitionとは固体表面に吸着された液滴の形状について、固体と液滴間の吸着作用の強弱によって生じる相転移である。具体的な成果は以下の通り; 1)相転移がある2次元Ising model(低温で磁場なし)に付随した緩和過程を正方形格子(一辺の長さl)で考える。このとき、境界スピンの配置に関するかなり緩い条件下で緩和時間がlについて指数的に長くなることを示した(K.Alexander氏との共同研究)。これは以前、樋口保成氏と行なった共同研究の結果を改良したものである。 2)固体表面に吸着された液滴の形状をrandom walkを用いて表現した上で、妥当な極限操作を施すことにより、wet phase,dry phaseに応じて巨視的(macroscopic)な液滴の形状を記述する確率過程を導出した(磯崎泰樹氏との共同研究)。
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