(1)1次元周期境界条件上の多体シュレーディンガー方程式において、磁場の大きさがかわると基底状態のスピンが変わる例を構成した。前年度に得られた結果と合わせて論文を出版した。 (2)2次元格子上でランダムな磁場のかかったシュレーディンガー作用素のスペクトルを調べた。中村周氏(東京大学)によりLifshitztailの評価が得られているので、Wigner型の評価が得られればスペクトル両端においてAndersonlocalizationの存在を示すことができる。任意の区間における固有値の数の平均をラプラス変換を用いて書き表してheatsemigroupを展開することにより、2次元格子上のループのない道の数についてのある種の評価が得られれば、Wigner評価が得られることまでつきとめたが、この道の数の評価を得ることができなかった。 (3)神永正博氏(東京電機大学)との共同研究で、準周期型デルタポテンシャルを持つ1次元シュレーディンガー方程式(準周期的クローニッヒペニーモデル)のスペクトルを調べた。ある条件下で点スペクトルが存在しないことと、対応する1次元格子上の準周期型シュレーディンガー作用素のスペクトルとの関係を表す式を得た。証明のアイデアは格子上のシュレーディンガー作用素の転送行列についてのSuto(1987)の結果を接続行列に応用して、同様の理論を展開することである。クローニッヒペニーモデルのスペクトルは単一の格子上シュレーディンガー作用素ではなく、その族のスペクトルと関係することがわかった。
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