1.神永正博氏(東京電機大学)との共同研究により、準周期的ポテンシャルを持つクロニッヒペニーモデルのスペクトルが特異連続であり、カントール集合をなすことを示した。点スペクトルの非存在は神永氏の以前の結果を用いて示される。絶対連続スペクトルの非存在は、格子上のハミルトニアンについては小谷理論により証明されるが、クロニッヒペニーモデルへの小谷理論の適用可能性は現段階では不明である。そこで、クロニッヒペニーモデルと格子上のハミルトニアンのスペクトルの関係を調べ、このことと格子上のハミルトニアンのスペクトルのルベーグ測度が0であることとを用いて、クロニッヒペニーモデルの絶対連続スペクトルの非存在を証明した。 2.神永正博氏(東京電機大学)との共同研究により、クロニッヒペニーモデルにおいてランダウアー抵抗と呼ばれる量を計算し、その漸近挙動を調べた。フェルミエネルギーがレゾルベントにあるときにはランダウアー抵抗は指数的に発散するが、スペクトルにあるときにはポテンシャルの形により様々な挙動を示す。(1)周期的ポテンシャルの時にはランダウアー抵抗は測度0の集合を除いて有界である、(2)ランダムポテンシャルの時にはランダウアー抵抗は指数的に発散する、(3)準周期的ポテンシャルの時にはランダウアー抵抗は高々多項式程度の増大しか持たない、ということがわかった。フェルミエネルギーがレゾルベントにある時とランダムポテンシャルの時には上の結果は久保伝導度と呼ばれる量と同様な振る舞いを示す。 3.ランダウハミルトニアンにおける絶対連続スペクトルの存在については、良い結果が得られなかった。その原因は現段階でアンダーソンモデルにおける絶対連続スペクトルの存在についての情報が全くないことによる。但し、点スペクトルの存在範囲についてはより改良された評価を得ることができた。
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