当初の研究計画に従い平成12年度前半は日本学術振興会特定国派遣研究員としてフィンランド国に滞在し、受け入れ機関であるJoensuu大学理学部数学教室の研究グループ及びアメリカ及び中国から派遣された研究者と共同研究を行った。帰国後に於いては、これらの更なる発展を目指し複数の国際及び国内研究集会で発表を行うと共に、機会毎に共同研究者と討論・打ち合わせを実施した。これによって今年度の研究成果として以下の知見を得ることができた: 1.局所的に有理型または代数型な解を有する一階斉次代数的微分方程式を決定する問題を考察する目的で、大域的には既知であった結果の局所化を行い、この問題の解決に応用した。(Dr.J.Rieppoとの共同研究) 2.Malmquist型の複素差分方程式が許容する大域的な有理型函数解について研究し、解の増大度に関する既知の評価を精密化すると共に、値分布論的に興味深い性質を有する解が存在する方程式の形を決定した。(Prof.I.LaineをリーダーとするJoensuu大学研究グループとの共同研究) 3.複素力学系に関連が深い古典的なSchroder方程式の係数を拡張した場合、その大域的な有理型函数解もまた同様に正則な増大度をもつという予想について研究し、それを導く評価式が実際に成り立つことを証明した。(Dr.D.Yangとの共同研究) 4.Cartanの第2基本定理を応用して得られたFermat型の函数方程式の自明でない有理型函数解の存在性に関する必要条件について調査し、新しいタイプの解を発見した。またその解を用いて、基本定理において与えられている評価式の精密性についても検証した。(Prof.G.G.Gundersenとの共同研究)
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