研究概要 |
複素平面内の与えられた領域において,p-乗可積分である正則関数や調和関数によって作られるバナッハ空間をベルグマン空間という.本研究の目的は,このベルグマン空間上で定義されたテープリッツ作用素と呼ばれる積分作用素の性質を解析することである. 積分作用素の性質の中で特に興味を持たれる事柄は,その作用素がいつ有界,コンパクト,あるいは可逆となるかを知ることである.テープリッツ作用素の有界性および可逆性に関する研究は,申請者が過去にある積分不等式の性質の解析に関連して行ったものである.また,得られた結果は,出版された複数の論文の中で述べられている.これまで申請が過去に行ったテープリッツ作用素の有界性および可逆性に関する研究の結果は部分的であり,今年度はそれらの特徴付けの研究において用いられた手法を改良し,より一般的な結果を得るための研究を行った.特に上で述べたカールソン不等式と呼ばれる積分不等式の性質の解析を行い,申請者が過去に行った研究の結果を含んだより一般的な結果を得た.また,考えるベルグマン空間も調和関数によって作られる空間とし,そこにおける(Ap)-条件に相当する新しい概念を考案して導入した. どのような結果を得たかを簡単に述べる.n-次元ユークリッド空間の上半平面上でp-乗可積分である調和関数によって作られるバナッハ空間を調和ベルグマン空間と呼び,bpと書くことにする.上半平面上の2つの測度が与えられたとき,一方の測度の任意のbp-関数のp-乗積分が他方の測度のp-乗積分の定数倍で一様に上から押さえられるときに2つの測度はカールソン不等式を満足するという.上から押さえる測度が上半平面上のルベ-グ測度に関して絶対連続で,そのラドン-ニコディム導関数が(Ap)-条件に相当する新しい概念を満足するとき,2つの測度がカールソン不等式を満たす為の必要十分条件を完全に特徴づけた. これらの研究は,今年度の科学研究費補助金が採択されてから着手したものであり,現において研究結果を執筆中である.
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