本研究の目標は、強制振動系を記述する偏微分方程式の周期解の対称性破壊分岐現象を数学的に正当化するための精度保証アルゴリズムを確立することである。まず、アルゴリズムの理論的枠組みとなる基礎定理(ニュートン法の収束定理・分岐定理・陰関数定理等)を偏微分方程式に直接適用できるように(すなわち、non-Frechet mapsに直接適用できるように)拡張・一般化することに成功し、その研究成果を一つのPreprintにまとめた。 もう一つの研究の柱として、分岐点の高精度の解析的近似解を数値的に構成するアルゴリズムとして、Spectral法と最小二乗法を組み合わせた独自性の高い方法を開発した。この方法の主な特徴は、近似解の精度が不十分であると判断される場合に、新たに高周波項を追加してより高精度の近似解を作ることが可能なことである。この方法は、数千項からなる長大な近似解を構成することができ、得られる精度はきわめて高いので、研究目標をほぼ満たすものと考えられる。この成果は2000年度の日本応用数理学会の年会において「Least-squares法を用いた偏微分方程式の長大な高精度近似解の構成法」という題で講演発表した。 最後に、分岐点における線形化作用素の逆作用素をnorm評価することが一般に技術的に難しい問題であることが研究の過程で明らかになった。常微分方程式系では有用な解析法がいくつか知られているが、それらは偏微分方程式系に適用できない。そのため、線形化作用素をより構造の単純な(「対角作用素」と名付けた)作用素によって近似する新しい方法を考案した。その成果を京大数理解析研の共同研究集会「偏微分方程式の数値解法とその周辺II」(2000年11月)において「非線形振動の分岐現象の解析」という題で講演発表した。
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