研究概要 |
本年度は二年計画の初年度であるため,研究対象であるパフィアン型ソリトン方程式に関しての基本的な理解を深めることを目的とした。パフィアン解を持つソリトン方程式系の典型例として,特に広田・太田の結合型KP階層について研究し,この階層の持つ対称性が無限次元リー代数D_∞であることを見出した。この視点に基いて多項式型のτ関数を調べ,シューア関数,シューアのQ関数と関係することか分かった。また,D_∞型の対称性を持つ離散方程式を導出し,少なくとも双線型方程式のレベルでは「超離散化」(離散方程式からの極限としてソリトン・オートマトンを得る手法)も適用可能であることを示した。さらに,ここでも現れた無限次元リー代数の構造をさらに拡張する試みとして,トロイダル・リー代数とソリトン方程式との関係についても研究を行った。結果として,(2+1)次元非線型シュレディンガー方程式,自己双対ヤン・ミルズ方程式等を,トロイダル対称性を持つ階層の一員として捉えることができた。 一方,ある種の行列積分は結合型KP階層のτ函数として捉えられることが分かっているが,カロジェロ模型と呼ばれる量子系の相関函数はそのタイプの行列積分と関係することが知られている。この動機からカロジェロ模型の持つ代数的構造についても研究し,波動関数に現れる多変数直交多項式の代数的構造を解明した。 得られた結果については,以下の学会・研究集会で発表している; ・「結合型KP階層の対称性,離散化,超離散化」 (短期共同研究「離散可積分系の研究の進展」,京大数理研,2000年8月) ・「(2+1)-次元NLS階層とトロイダル代数」(日本数学会秋季総合分科会,京都大学,2000年9月) ・「パフィアン解を持つソリトン方程式の階層について」 (研究集会「組合せ論・表現論とその周辺」,岡山大学,2001年1月)
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