研究概要 |
前年度に引き続き、申請者が開発したパルス放電ノズルとステップスキャンFT-IR分光器とを組み合わせた装置を用いた赤外分光実験を行った。10%のC_2H_2をAr中に希釈し、背圧3.5atmで直径0.8mmのノズルからパルス的に真空中へ断熱膨張させたところ、3270-3310cm^<-1>の領域に回転温度が約12Kと低いC_2H_2のv_3振動バンドが確認でき、同時に3232cm^<-1>付近にピークを持つ幅広いバンドが見られた。バンド幅が広く、個々の回転構造が分離できていないこのバンドのピーク位置とバンド幅は、立方晶C_2H_2エアロゾルによるものと一致した(Hirabayashi and Hirahara, J.Mo1.Spectrosc.Submitted)。同様のC_2D_2の吸収分光でも、分子のスペクトル線に加えて低波数側にシフトした幅広いバンドがみられ、そのピーク波長はアセチレン内のH/D同位体置換効果により完全に説明することが可能であることを見出した(Hirabayashi,Yazawa,and Hirahara,in preparation)。また、パルスノズル全体を加熱することにより、ベンゼンなど芳香族炭化水素単量体およびクラスターの赤外吸収スペクトルの取得にも成功した。 本研究の結果、星間空間に類似した条件でのスペクトル測定が可能となり、この分光装置とレーザーとを組み合わせることにより、気相でのPAHの赤外蛍光スペクトル測定に対して相当の性能を発揮することが期待される。
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