1.Ia型超新星を用いて宇宙パラメータを決定するとき、超新星の明るさを補正してより良い標準光源とすることで、パラメータ決定の誤差を小さくすることができる。この補正の際に重要な役割を果たすものにPhillips関係と呼ばれる超新星の光度と減光率の間の相関関係についての経験則がある。この関係の起源は、補正方法の改良のみならず、Ia型超新星の爆発メカニズムの解明にとっても重要である。本研究では、この起源の一つの説明として爆発の非球対称性を考え、爆発を見る角度の違いで明るさのばらつきが生じる可能性を検討した。そのために、非球対称な爆発に対する超新星の光度曲線の解析解を導出した。またこれを用いて予想される明るさのばらつきを求めた。観測されている明るさのばらつきから、爆発の際に超新星内部を伝播する燃焼波がどの程度非球対称になるかに対して制限を得た。また、Ia型超新星のような小質量の星の爆発では、爆発により飛散する物質の速度は非常に大きく準相対論的な値に達する。そこで、この相対論的な膨張が光度曲線に与える影響を調べた。 2.ガンマ線バーストのコラプサー・モデルで予想されるトーラスからの熱的ニュートリノ輻射の量とν+ν^^-→e^++e^-反応によりトーラスの周囲に解放されるエネルギーの総量を評価した。とくに、これまで行われていた計算よりも、素過程を詳しく取扱った。そのためトーラスの構造(形状や温度、密度分布など)は簡単なものを仮定して、エネルギー解放率の計算を行った。今後、多次元シミュレーションを行い、トーラスの力学的および熱的進化のモデルを構築して、現実的なコラプサー・モデルで解放される全エネルギーを求める予定である。
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