この研究の目的は、K中間子系のCPの破れの二つのパラメータの決定に必要なハドロンの弱行列要素の定量的な評価にあった。この目的を達成するため、CPの破れのもう一つのパラメータであるε′/εの計算に伴う種々の問題点に対し理論的な研究を行った。 このパラメータを計算する場合、K→ππ崩壊という終状態が二つのπ中間子である複雑な崩壊過程を計算する必要がある。終状態が二つ以上のハドロンの場合、ハドロン間の終状態相互作用によりユークリッド空間上の行列要素が一般に非物理的な量になる。この問題を克服する方法はおおよそ3つ考えられる。それら3つの方法を元に実際に格子上で数値計算する場合の具体的な方法と問題点を研究した。 その1つ「CHPTを使ったK→π過程からK→ππ過程の行列要素を求める方法」が、現在、筑波大学計算物理学研究センターで行われている計算にもちいられた。しかし、同センターの結果は実験値を再現しないことが分かった。これはCHPTによる方法の限界を意味しているが、それについて現在、数値データを解析し詳細に研究している。また、終状態相互作用を直接扱う方法による数値計算を計画している。その準備としてππ散乱の研究を行っている。
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