重力崩壊型超新星の爆発のメカニズムには、ニュートリノの輸送が重要な役割を果たしているということに関しては、多くの研究者の意見が一致しているところである。最近では、超新星だけではなく、ガンマ線バースト、極新星、マグネターなどの高エネルギー天体にも重い星の重力崩壊が関係していると考えられ、注目を集めている。本研究は、こうして高エネルギー現象に共通すると思われるメカニズムを大規模な数値計算により、定量的に明らかにすることを目指している。そのためにエネルギー輸送を相対論的ボルツマン方程式で近似なしに解くコードを開発してきた。原子中性子星の準静的進化によるテストを終え、重力崩壊のダイナミカルな計算をできるようになりつつある。 一方、上で述べたように、超新星を含めた宇宙の高エネルギー現象では非球対称性の重要さがあらためて注目されている。筆者らは早くから、星の自転により扁平になった中性子星から出る非球対称なニュートリノに注目し、これが球対称では爆発しないようなものを爆発させられる可能性を指摘し調べてきた。今年度は、理研の清水氏らとの共同研究で、より系統的にこの可能性を明らかにした(発表論文1)。また、上記コードは超新星コアでのr過程重元素の合成計算をも応用され、超新星がいわゆる即時爆発メカニズムにより爆発した場合、その非常に中性子過剰な放出物質内で、太陽組成に近い重元素を再現できることを示した(発表論文2)。これは、今まで不可能と思われたシナリオを復活させただけでなく、即時爆発の重要性を再起させたという意味でも重要である。これをうけ、新たに得られた状態方程式を用いた即時爆発のモデル計算も行い、現在論文を投稿中である。また、マグネターとの関連で、今後強磁場超新星を研究する必要が出てくることを想定し、強磁場下の真空の性質(分極率)を調べ、屈折率の近似式と有限温度密度への拡張を定式化した(発表論文3)。状態方程式に関しても論文投稿中である。
|