最近の天体物理的な観測によると、宇宙定数は、ほとんど零であるが完全にではなく、非常に小さい正の値をとっていることが示唆されている。このように、何らかの物理量が極めて零に近い場合、一つの理解は、運動学的に理論の対称性を考え、より大きな対称性が存在する場合に得られるが、宇宙定数の場合、そのような対称性は知られていない。そこで、動力学的な帰結として理解することが試みられるが、そのための前提として、宇宙定数が理論の中の力学変数になるような状況を構成しておく必要がある。そのような試みとして、高次元の時空間を用いるものが考えられる。具体的に考察した6次元時空間を4次元にコンパクト化する設定の場合、その部分空間に4次元の物質を導入し、さらに背景場としてゲージ場を導入することで、6次元の宇宙定数が正のときに全時空間が正則である模型を得ることができた。さらに、6次元の宇宙定数が負の場合にも、部分空間に5次元の物質を導入することで、同様に全時空間が正則であるように模型を拡張することができた。6次元の宇宙定数は固定されていても、問題の4次元の宇宙定数は積分定数として現れるので、必要な状況を与えることに成功している。4次元の宇宙定数の値が零に近いものを選択するためには、そのための機構を導入する必要があるが、別の4次元部分空間を高次元中に導入して、その動力学を考察することにより、重力相互作用自体が選択に貢献する理論の構築が可能となる。
|