本研究は大型水チェレンコフ検出器、スーパーカミオカンデを用いて太陽ニュートリノの観測を精度良く行うことである。本年度はまずスーパーカミオカンデ1100日のデータを精密に解析した。ここで本研究の目的でもある事象の方向を用いた新たな太陽ニュートリノ事象セレクションプログラムを開発した。このプログラムにより、水中に宇宙線が飛び込んできたときに発生する核破砕事象起源の放射線物質によるバックグラウンド事象の内、特に弱いエネルギーの事象をさらに除去することが可能になった。それにより、低エネルギー領域において、全ての事象に対する太陽ニュートリノ信号の割合を格段に改善することができた。また太陽ニュートリノフラックスの昼夜変動およびエネルギースペクトルを用いたニュートリノ振動の解析を行った。その結果、ある一つのニュートリノ振動解に対して95%の信頼度で許されないという強い制限をつけることができた。その結果は本年度6月にカナダ、サドベリーで開催されたニュートリノ国際会議に於いて報告がなされた。続いて、実験の系統誤差をさらに抑えるために、レーザーを用いた装置較正システムの開発を開始した。本検出器における太陽ニュートリノの観測において特に重要な点は、使用する水の透過率である。その場所依存性、方向依存性を調べるためにレーザーを水タンクの様々な場所、方向に設置するシステムの開発を進めている。この装置較正は来年度に予定されている検出器メンテナンスの時期に行う予定である。
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