研究概要 |
超冷中性子(UCN、E【less than or equal】0.2μ eV)は、物質表面で全反射する特性より物質容器に閉じ込め可能なため、精密物理実験にしばしば利用されるが、その検出にはUCNならではの様々な問題が生じる。従来UCN検出には^3He(n,p)t反応を用いた^3Heガス検出器が使われてきたが、別候補として荷電粒子変換膜内での^6Li(n,α)t反応から生じるα、tを半導体部で検出する固体UCN検出器があげられる。この検出器は、測定可能UCNエネルギー下限値、コンパクト化、低温特性等、^3Heガス検出器に比べ多くの利点を有する。本研究では実用可能な固体UCN検出器の開発を目指している。本年度は、荷電粒子変換膜開発に取り組み、Al箔(15μm厚)上にTi+^6Li+Ti+Niの順に膜を蒸着したもの等、数種の変換膜を作成した。この際^6Li膜厚(1.0〜1.5μm)は、UCN領域のみで高検出効率が得られるよう最適化し(UCN吸収率83〜95%/熱中性子吸収率0.5〜0.75%)、^6Li膜を透過したUCNのみをNi膜で全反射させ検出効率の向上を試みた。作成した変換膜を表面障壁型Si検出器(検出面積900mm^2)上に乗せ、熱、冷中性子で中性子シグナル(α,t)検出を確認した後、京大原子炉室内のUCNタービンから供給されるUCNの検出に成功した。同施設既存のUCN用^3He検出器との比較測定ではUCN検出効率比〜2/3、バックグランド中性子検出効率比〜1/6程度の高性能を得た。この検出器は既に「UCN磁気減速効果測定実験」で蒸着フィルターやビームチョッパーを用いたタービン出力のUCNエネルギー分布測定等に利用している。更に数種の変換膜を作成し、ILL(フランス)の大強度UCNビームを用い、固体検出器特性試験(共同研究)を進めてきた。UCN検出は既に確認できており、現在、膜条件の相違等の詳細な特性試験を行っている。
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