本研究補助金の援助を受けて・京都大学化学研究所にある蓄積電子ビームエネルギー100MeVのコンパクト電子蓄積リング(KSR)を用いた、レーザアンジュレータ(逆コンプトン散乱)による100keV〜500keVの高輝度硬X線発生方法について研究をおこなってきた。これは、その利用のために大規模放射光施設を必要とする高輝度硬X線を、平均直径8m程度の小型リングで発生させ、さまざまな応用につなげようというものである。平成12年度は様々なレーザを想定して、計算をおこなってきたが、平成13年度になり、共同利用目的でKSR実験施設に、CW10W、532nmのシングルモード固体レーザが設置され、それを用いた硬X線発生実験の可能性がでてきた。そこで、平成12年度におこなったいくつかの計算結果のうち、CWレーザをもちいた可能性についてより具体的な検討を加え、計算とともに予備実験をおこなった。 まずレーザであるが、計算からCWレーザを用いた場合、より単色のX線を得るには正面衝突をおこない、10mm程度の相互作用領域をとるのがよいと思われる。このための、光学システムを設計して、実際にレーザ測定をおこなった。その結果、10%以下の設計とのずれで、これを実現できていることを確認した。同時に、電子ビームにとって最も重要なパラメータである電子ビームサイズの測定をおこなった。当初はイオントラッピングや強い縦方向ビーム不安定性などの原因により、ビームサイズは、計算よりかなり大きなものであったが、それらの改善により、100mA蓄積時でも平均ビーム半径0.25mmを達成した。これは、平衡エミッタンスよりは大きいが、空間電荷力とMicrowave不安定性などを考慮に入れた計算とは、比較的よく一致するものである。 こうした予備実験の後、現在はエネルギー分解能のよいGe検出器をもちいたX線計測を始めており、既に、比較的シャープな400keVのX線ピークを観測するなど有望な結果が出始めている。今後は、実験を継続し、定量的な発生X線量の評価とより単色化を目指す予定である。
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