研究概要 |
本研究は、^<28>Si(p,p′)^<28>Si(6^-,T=1);^<16>O(p,p′)^<16>O(0^-,T=1)の2つの特色ある状態への遷移の断面積及び偏極観測量の測定から、原子核内における有効相互作用に対する情報、特に中間子質量の密度依存性に対する知見を得る事にある。上記の遷移は、状態密度が僅か数十keVの領域にあるため、運動量分散整合による極めて高分解能の測定が必要になる。本年度は、まず運動量分散整合を実現する為のビームラインを整備した。次に、今回設置したビームロスモニタを用いて、運動量分散整合を実現した。 運動量分散整合とは、ビームラインで磁気分析装置の持つ運動量分散と逆符号の分散を発生させることをいう。この事は、ビームラインと磁気分析装置を一体として見た場合の運動量分散が0である事を意味し、焦点面での位置(運動量)がビームの持つ運動量(の幅)に依存しない事を意味する。 整備したビームラインでは、リングサイクロトロンを出たビームは逆S字型に輸送され、必要な運動量分散を稼いだ後標的に照射される。運動量分散整合の為には、ビームラインの各部分で所定の運動量分散を発生させる必要がある。ここで、発生した運動量分散が不適切であった場合、ビームの広がりが大きくなり、エミッタンスの劣化を招く。これを防ぐため、ビームラインの各セクションにビームロスモニタを設置し、エミッタンスを確保した。 最終的に、^<28>Si(p,p′)、^<16>O(p,p′)両反応に対して、運動量分散整合をとる事に成功した。得られたエネルギー分解能は、19keV(^<28>Si)並びに22keV(^<16>O)であり、最終的に測定する遷移を分離するのに十分である。
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