本年度は、荷電粒子発生源の獲得及び超短パルスレーザーを用いた干渉計のデザインに終始した。荷電粒子発生源については、テラワット出力の超短パルスレーザーを薄膜に照射し、そこから発生する荷電粒子を利用した。この方法自体が研究の途上にあるが、ファラデーカップによる正負両極信号の観測及びCR39(1mm厚のプラスチック板)に穴があいていることから、電子及び正イオンが発生しているのは間違いない。この方法において、粒子発生に用いる超短パルスの一部を、粒子検出のための検査光として分岐して用いることにより、発生と検出をパルスごとに完全に同期させることが可能となった。干渉計のデザインについては、元来、干渉計で観たかったものは、局所的な屈折率の変化が、検査光に与える位相変化であるので、干渉計を位相変化検出というより広い観点から検討しなおした。その結果、検査光として直線偏光した光をセンサー物質に入射し、センサー内の屈折率変化により、透過光の偏光状態が楕円偏光に変化する点に着目することにした。直線偏光は、ある一軸方向にのみ電場が振動している状態で(ここでは縦軸と呼ぶ)、楕円偏光はその軸に直交する軸(横軸)にも電場成分をもった状態である。そこで偏光プリズムを使って、まず縦軸方向に直線偏光した光を作り、同種のプリズムを直角に回転した状態で受光してやれば、経路途中に位相変化がなければ、受光プリズムからは光が漏れてこない。それに対し、荷電粒子によりプリズム結晶内の縦方向と横方向の間に局所的な屈折率差が生じた場合、その部分で位相差が生じるため、横軸方向の電場成分が新たに生じる。その場合、受光プリズムから光が漏れてくる状態になることが期待できる。本研究で用いた偏光プリズムは、縦軸偏光を作った場合、横軸方向の成分を10^<-5>程度の割合に抑えられる性能をもつ。テストとして、上述の粒子発生用の薄膜と偏光プリズムの直交ペアーを真空容器内に配置した上で、超短パルスレーザーを薄膜に照射し、受光プリズムから漏れてく光を光電子増倍管で測定した。その結果、パルスごとに薄膜照射と相関をもって、漏れ光が強くなる兆候が見られた。
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